欧州ガラス:チェコ、オランダ、ベルギー編
ローマから世界に広がっていったガラスは、やがて欧州全土で独自の発展を遂げていきます。ここからは欧州各国のガラスの史の特徴をご説明してまいります。
チェコ
現在のチェコに位置するボヘミア地方で、17世紀末になるとカリ灰を用いたボヘミアンカリクリスタルが発明され、一時代を築きました。当初のボヘミアンクリスタルは、安定的に生産することはできませんでした。18世紀になると技術の進歩により安定的に生産されるようになり、その高度な技法のグラスは世界各国に輸出されていきました。あのムラノ島のグラス職人さえも、そのハイレベルな技術を真似たといわれています。ベネチアガラスを生んだチェコは、現在も世界最大の鉛クリスタルの生産国であり、輸出国。そのほとんどは世界各国へ輸出されています。
かつてベネチアの地もボヘミアの地も旧ハプスブルク家の領地だったことから、オーストリアの首都ウィーンにある宮殿シェーンブルン宮殿の大きな鏡はベネチアンガラス、マリアテレジア様式で知られるシャンデリアはボヘミアンガラスが使われ、現在も当時のオリジナルの美しさをそのまま体感できます。
クリスタルガラスとは、ガラスに酸化鉛を混ぜて透明度と屈折率の高いガラスを作り、その特製を生かした表面カットを施すことでクリスタル(水晶)のような輝きを持たせたガラス製品。鉛の含有率は24%以下で普通ガラス、24%以上の含有率でハーフ・クリスタル、30%以上の含有率でフル・クリスタルとされています。六角柱状の鉱物である石英をクリスタルと呼びますが、クリスタルガラスとは物質的に全く異なるものです。クリスタルガラスは石英クリスタルのごとく美しガラスの様からその名称がつけられました。
オランダ、ベルギ―
オランダやベルギ―ではスペインのハプスブルグ王朝の統治下時代(1500年頃)に王朝とヴェネチア共和国とが緊密な関係にあったことから、ヴェネチアのガラス技術を取り入れたガラス工芸が盛んでした。1880年頃にベルギーはフランスや国内のガラス工場を次々と従業員4000人を超える世界最大のガラス工場となったほどで、現在でもヨーロッパのガラス産業の中心地でもあります。