ローマ時代にガラスは世界にひろがった
ガラスの歴史はローマ時代に大転換期を迎えました。それまでのガラス技術は、鋳型にガラスの粉末を入れ火にかけ、冷却した後研磨して仕上げる工法でした。
この従来の製法技術を加速させたのは、約2000年前にシリアで発明された吹きガラスの技術発明によります。
吹きガラスは、一本の鉄パイプの先端に溶けたガラス塊をつけ、息を吹きこみ成形する方法のため、従来法にくらべて約200倍の効率でガラス器が生成されるようになりました。
この技術とともに、これまで高価な宝飾品として位置づけられていたガラス器は、道具、装身具、医療用具、照明などの日用品として日常生活に浸透していきました。現在、私たちが使っているガラス製品の大部分は、ローマ帝国時代にその原型が作られていたというのですから驚くほかありません。
ローマ帝国のガラスは、初代ローマ皇帝の時代(紀元前27年)からローマ帝国東西分裂(395年)の間を「ローマンガラス」といわれ、その後西ローマ帝国滅亡(476年)間を「後期ローマングラス」、東ローマ帝国滅亡(1453年)を「ザビンチグラス」と区別して称されています。今日のヨーロッパのガラス産業はローマン帝国の「ローマンガラス」です。まさに「すべての道はローマに続く」の例えのようです。ところがローマ帝国の滅亡とともにガラス産業はヨーロッパから消えていきました。
このローマングラスの伝承したのが、ササン朝ペルシャやイスラム帝国です。この中近東一帯のイスラム文化圏は、約7世紀前半頃に高度な発展を遂げていきます。この地が生まれた「イスラムガラス」と呼ばれるその技法は、ローマ時代のガラス工芸とササン朝ペルシャの技法を受け継ぎ、独自の高水準ガラスへと発展させました。